ソファの上に
横たわった
絶望が
ヒステリックに
カレンダーを
捲る時

空欄の続く
日付を黙認し
回転椅子へと
身を投げた
木曜日の朝

(その時
 缶コーヒーの中身は
 確かに空だった)

割れた腕時計の
文字盤のガラス片を
丹念に拾い上げて
ただ笑うように。

そんな残念さを
君は
僕にくれたのだった。




テーマ: 自作詩
ジャンル: 小説・文学


縫い閉じられた唇が
かたちづくる笑顔は
そう無気力なものでもない

ホチキスで閉じられた瞼が
流す涙は
必ずしも無温度でもない

鉛で閉じられた耳が
そばだてる音は
けして無音でもない

(頭蓋骨を凌駕して
 浸透してくる
 思想よ
 湧き上がる
 思考よ
 どうかこの夜は
 反逆せずに
 静かに眠れかしと)

薬で閉じられた心が
思う感情は
やはり無感動なものでもない


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ジャンル: 小説・文学




空っぽになった ビールジョッキは
大人しくテーブルの上へ

(それは果たして鈍器ではない)

口元の泡は
ネクタイで拭き取って
マナー違反のボーダーを問う。

けして、

踏み割られた眼鏡を
愛し続けることが
間違ってはいないように

(駆け抜けろ荒野を
 咆吼せよ海原に)

プラットホームに
転がる暴力は
ハンカチで包んで
ポケットへ

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ジャンル: 小説・文学

コーヒーカップの底に
(青空ばかりを詰め込んで)
残った雲の染みのような

そんな

後悔をして君は

君は

晴れ晴れとした顔を
上に向け
歩き始める。

(その足元の影までが
 まるで君を祝福し)

点々と垂れる
血の跡も
振り返らず

(けれどそれは
 君の軌跡でもあり)

ただ真っ直ぐに
歩いて行くのだ。

テーマ: 自作詩
ジャンル: 小説・文学


盗まれたものは
たぶん
他の誰かの盗まれたものと
たぶん
公園のベンチなんかで
たぶん
ひなたぼっこでもしているに違いない

(やさしい盗人は
 そっと盗み取って行く
 穿かれてしまった心だとか
 欠けてしまった夢だとか
 そんなものを)

あたたかな陽の光をうけて
盗まれたものは
たぶん
きらきらとかがやいている
たぶん

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ジャンル: 小説・文学


ソファの陰から顔を出した疑問

「この世には詠いあげるだけの価値ある事象があるだろうか?」

愚問ゆえ

コップに注ぎ込んで
ひと飲みに

では

テーブルの上に残された

「詠うということの重要性は?」

という質問には

失笑と冷笑を浴びせかけて
鎮火

(書けないという苦しさは
 尚且つ書きたいという欲求があるがゆえに)

もどかしく込み上げる
言葉にならない言葉を

今日も

舌の上からとりあげて

詠う

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ジャンル: 小説・文学


探し続けている詩人が
もしも
詠わなくなっていたらば

そこに

絶望の鸚鵡が現われて

繰り返す
繰り返す

過去の睦言

(言葉は死なない
 そこに読む人のある限り)

ランプに灯りを点して
旅に出る

本当に
探し続けていた詩人が
詠わなくなったのか

その目で
その耳で

確かめるまでは

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ジャンル: 小説・文学


あてどない
言葉を綴って

うたを

静まりかえるような
とても静かなうたを
のぞんでいる

そのうたが

たとえようもなく降りそそいで
宝石のような輝きが

君の瞳に

灯されますようにと





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ジャンル: 小説・文学




そんな午後は
まともに思考など抱えてはいられない
声をなくして

もくもくと

(自分は機械だと言い聞かせながら)

たんたんと

(あるいはロボットぐらい上等でもいいと思い直し)

それでも
人である何かは欠けてこぼれ落としてしまったのは事実で

そんな午後は
靴の先で取り散らかした
自分の欠片をかき集めながら
汗ばんだシャツを引っぱり
もういちど

(せめてアンドロイドくらいの見てくれは保ちたい)

前髪を掻上げ

そんな午後を
放り出すことも出来ずに
抱えている。


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ジャンル: 小説・文学




耐えきれないほどの透明感を持った質量が
こちらへとどっと押し寄せてくる。
空気を押しわけ身体の隅々までを窒息死させ
なおかつその巨大な質量の下に圧し潰さんとする水。
肺いっぱいに広がりゆく冷たい感触が
薄ら青く朧気に暗い水の中で
自分を恐怖させる。

(もがいてももがいても水圧に締めつけられた肺は
 破れて水の入ったビーチボールのように頼りなく
 右か
 左か
 上か
 下か
 浮上しつつあるのか沈みゆくのか
 漂っているだけなのか
 何故こんな目に遭っているのか
 水面はあるのか
 果たしてそれは何処なのか
 近づきつつあるのか遠ざかっているのか
 自分はもうじき死ぬのか
 何時死ぬのか
 まだなのか
 今以上に苦しいのだろうか
 今以上に恐ろしいのだろうか
 だが
 今よりも苦しく恐ろしいことがあるのだろうか
 何時までこうしていなければならないのだろうか
 このぴったりと締めつけてくる水を
 引きはがすすべはないのか
 もはや私は見捨てられたのだろうか)

「何に?」

水は神が創り出した物だと
これほど実感したことは無い



テーマ: 自作詩
ジャンル: 小説・文学

プレー

Category : 現代詩




蹴飛ばされてきた噂を
うまくトスしてパスしたならば
しめやかな観衆がにわかにわきたつが
自分の胸の中は
なぜだか
ゴミ収集車に回収されたばかりの
ポリバケツのようで
臭い吐息が漏れるこの口に
ぴたりと合うフタを探す毎日



テーマ: 自作詩
ジャンル: 小説・文学

真昼の灯台

Category : 現代詩




考えなければならないことが
どっと押し寄せてきた時
のみこまれ
沈没し
浮上できなくなって
肺いっぱいに吸い込んでしまった
数々の事案を
ゲホゲホと吐き出しながら
なんとか岸辺へと打ち上げられた。

(灯台は
 真昼だというのに
 沖をさして明々とともっている)

なぜ

あの時自分は
己の感覚を
信じきれなかったのか

他者の指標は
結局のところ
自らの尺度とはなり得ない

(灯台は
 真昼だというのに
 沖をさして明々とともっている)

だが

後悔は臆病を作るかも知れずとも
二度と同じ轍を踏まぬ
模索の助けにもなるだろう


テーマ: 自作詩
ジャンル: 小説・文学

Profile

羽島 貝(hajima, kai)

Author:羽島 貝(hajima, kai)
1973年 東京生まれ
代表著書:羽島貝詩集『鉛の心臓』
日本詩人クラブ会員
日本現代詩歌文学館振興会会員
球体関節人形師
Twitter→羽島貝@hajima_kai

中年が詩を綴る日々。

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