素描LXXXIII

Category : 現代詩




頭の中から
音楽が消えた世界を
生き始めて
十数年。
この世界には
色がない。
ハミングを求めて
雨音に聞き耳をたてる毎日だ。


テーマ: 自作詩
ジャンル: 小説・文学




何処へ行けばいいのだろう
(行方がわからない)

何をやってきたのだろう
(ただ取り散らかしてきただけ)

途方にくれる
真昼

(白昼夢のように)

足元の黒々とした影に
落ちる。


テーマ: 自作詩
ジャンル: 小説・文学




その詞は歌わない
その曲は踊らない

(壊れた蓄音機の針は飛び続け)

かかとの取れたピンヒールと
かかとの潰れたローファーで

ただ 行進を

(ただ 行進を!)

靴音高く
鳴り響け

(それも音楽?)

深夜、突然に。


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ジャンル: 小説・文学




それは
簡単なことだった

キャンベルスープの缶から
中身を取り出すように
たやすく
自我を注ぎ出して

スープ皿に
盛り付けて
スプーンを添えて
君に差し出すなんてことは

(とても飲めた代物じゃないかもしれないけれど)


テーマ: 自作詩
ジャンル: 小説・文学





少しずつ
歩き始めた。

(幾度か倒れた)

失った声で
言葉を紡いだ。

(頭の中でだ)

迷い込んだ交差点で
頭上を仰ぐ。

(途方には暮れず)

信号の青を探した。

(間違ってはいない)

君の手旗信号の旗はいつも
オムライスの上に乗っているアレで

僕は双眼鏡を片手に
群衆の中で君を探す。

(交差点を渡るなら
信号は青だ)

アスファルトに刻み込まれた
タトゥーのような横断歩道を渡り

僕はまたしても君の助言に
従ったことに舌打ちして

笑う。

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ジャンル: 小説・文学

乾杯の後に

Category : 現代詩



テーブルに置かれた
スープ皿に満たされた
嘲笑を
スプーンで口へと運び
君は飲み干した。

次に
侮蔑をバターナイフで
パンへと塗りつけ
ひと齧り。

グラス一杯の愚弄を飲み込んで、
そうしてナプキンで口元を拭くと

「ご馳走様でした」

と、君は言ったのだ。

実に毅然と
まっすぐに前を向いて。

君への言われなき中傷を
笑いながら給仕していた者たちは
恥じ入り、頭を垂れた。

(テーブルに置かれたナプキンに
拭われたのは
噛み締めて唇の端に滲んだ
君のプライドだ)

人として生きるために
今日も食べる。

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ジャンル: 小説・文学




アスファルトで出来たタフィーを
ほおばってしまったようなものだ

その哀しみを
その痛手を

噛みしめる必要なんて
どこにも無い

だた吐き出せばいいだけだ
ゴミバケツの中へ

(あるいは生コンクリートで出来た
 ソフトクリームを
 舐めてしまったようなものだ。)

君のスイーツは
そんなもので出来ているわけがない
そうだろう?


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ジャンル: 小説・文学




悲痛な叫びさえも
その魂には届かなかった。
乾いた微笑みをたたえながら
ただうすらぼんやりと浮いている。

激情の罵声すらも
その魂には届かなかった。
調子の外れたハミングを
ただ垂れ流して転がっている。

どうか救いを

無に囚われながら
無に帰することも出来ずに
雑音と
雑念を
撒き散らす この
憐れで矮小な この
わたくしと云う名の
魂を

どうか

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ジャンル: 小説・文学

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君にガラスの靴を贈って
真っ赤な林檎を囓らせ
茨の城に眠らせて
キスをして目が覚めたら
さあこの薬を飲んで
その声を潰すんだ

そう

僕だけの
僕だけのお姫様を
仕上げるんだ

(山積みの絵本に
 お話のソノシート)

ああ 嬉しいな

僕だけの
僕だけのお姫様。





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ジャンル: 小説・文学




蛍光灯が明滅する
廊下の突き当たりで
飲んだ
紙コップの珈琲の
熱さ。

深夜の焦燥と不安

どうか

と祈りながら
珈琲で
流し込んだ。

どうか

と。

それは会社の
あるいは病院の
もしくは空港なんかの
一角で

(とある宗教では祈りと珈琲は一対だった。)

熱く胸に染みわたる
珈琲に
自罰を重ねて

後悔も反省も
ミルクと砂糖で
蕩かして

どうか

と。

吐いた溜息に薫る
珈琲は
失意と希望を漂わせて。



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ジャンル: 小説・文学




おやすみを言う前に
ホットミルクで舌先を火傷をした。

おやすみを言う前に
テレビは青白い光を仄暗い部屋に投げていた。

おやすみを言う前に
蛇口の水滴はバスタブに落ちていった。

おやすみを言う前に
ガード下の空缶は風に転がっていった。

おやすみを言う前に
街灯は工事する男達を照らしていた。

おやすみを言う前に
黒い犬は、そっと笑った。

そう、おやすみを言う前に。


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ジャンル: 小説・文学

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王様の耳はロバの耳だなんて
叫ぼうにも
井戸がなかったので
僕は
やむなく
ポリバケツの中へ
叫んでみた

(衝撃の事実というやつを)

翌朝

定刻通りにポリバケツの中身は
処理場へと運ばれていった。

(処理場の煙突から
 立ち上る
 煙の行く末は
 果たして)

彼の理髪師が
最後にどうなったのかは
もう覚えてはいない
けれど


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Profile

羽島 貝(hajima, kai)

Author:羽島 貝(hajima, kai)
1973年 東京生まれ
代表著書:羽島貝詩集『鉛の心臓』
日本詩人クラブ会員
日本現代詩歌文学館振興会会員
球体関節人形師
Twitter→羽島貝@hajima_kai

中年が詩を綴る日々。

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