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羽島 貝(hajima, kai)

Author:羽島 貝(hajima, kai)
1973年 東京生まれ
代表著書:羽島貝詩集『鉛の心臓』
日本詩人クラブ会員
日本現代詩歌文学館振興会会員
球体関節人形師

中年が詩を綴る日々。

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汗ばんだシャツが、はりつく午後に。




そんな午後は
まともに思考など抱えてはいられない
声をなくして

もくもくと

(自分は機械だと言い聞かせながら)

たんたんと

(あるいはロボットぐらい上等でもいいと思い直し)

それでも
人である何かは欠けてこぼれ落としてしまったのは事実で

そんな午後は
靴の先で取り散らかした
自分の欠片をかき集めながら
汗ばんだシャツを引っぱり
もういちど

(せめてアンドロイドくらいの見てくれは保ちたい)

前髪を掻上げ

そんな午後を
放り出すことも出来ずに
抱えている。


テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

ダーク・ウォーター




耐えきれないほどの透明感を持った質量が
こちらへとどっと押し寄せてくる。
空気を押しわけ身体の隅々までを窒息死させ
なおかつその巨大な質量の下に圧し潰さんとする水。
肺いっぱいに広がりゆく冷たい感触が
薄ら青く朧気に暗い水の中で
自分を恐怖させる。

(もがいてももがいても水圧に締めつけられた肺は
 破れて水の入ったビーチボールのように頼りなく
 右か
 左か
 上か
 下か
 浮上しつつあるのか沈みゆくのか
 漂っているだけなのか
 何故こんな目に遭っているのか
 水面はあるのか
 果たしてそれは何処なのか
 近づきつつあるのか遠ざかっているのか
 自分はもうじき死ぬのか
 何時死ぬのか
 まだなのか
 今以上に苦しいのだろうか
 今以上に恐ろしいのだろうか
 だが
 今よりも苦しく恐ろしいことがあるのだろうか
 何時までこうしていなければならないのだろうか
 このぴったりと締めつけてくる水を
 引きはがすすべはないのか
 もはや私は見捨てられたのだろうか)

「何に?」

水は神が創り出した物だと
これほど実感したことは無い



テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

プレー




蹴飛ばされてきた噂を
うまくトスしてパスしたならば
しめやかな観衆がにわかにわきたつが
自分の胸の中は
なぜだか
ゴミ収集車に回収されたばかりの
ポリバケツのようで
臭い吐息が漏れるこの口に
ぴたりと合うフタを探す毎日



テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

真昼の灯台




考えなければならないことが
どっと押し寄せてきた時
のみこまれ
沈没し
浮上できなくなって
肺いっぱいに吸い込んでしまった
数々の事案を
ゲホゲホと吐き出しながら
なんとか岸辺へと打ち上げられた。

(灯台は
 真昼だというのに
 沖をさして明々とともっている)

なぜ

あの時自分は
己の感覚を
信じきれなかったのか

他者の指標は
結局のところ
自らの尺度とはなり得ない

(灯台は
 真昼だというのに
 沖をさして明々とともっている)

だが

後悔は臆病を作るかも知れずとも
二度と同じ轍を踏まぬ
模索の助けにもなるだろう


テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

その朝も、プラットホームで。




静かに
満ちるのを待っている

(時には戦略的に攻めなければならないことも
 あるやもしれないが)

夜に積もる雪のはかない音が聞こえるくらいに

(かつて掛けてもらった
 毛布の温もりを思い出しながら)

じっと
その時を待っている

数々の失った物や人や立場が
少しずつ
少しずつ
あるものはもう戻らず
あるものは帰ってきてくれた

(そうしてそれが多分
 元からの自分の許容量)

静かに
満ちるのを待っている

その朝も

プラットホームに立ちながら
そう
あともう少し

テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

音楽が聞こえてこない




音楽が聞こえてこない

ソファの裏から
テーブルの下
冷蔵庫の中
昨日買ったばかりの
リンゴを割ってみても
けれど音楽が聞こえてこない

(飛ぶ鳥を見なくなった空で
舞う蝶を見なくなった野辺で)

走ってはとまるを繰り返す
まだ音楽は聞こえてこない

(路面を水滴が
 穿ち始める
 雨だ!)

僕はピアノを持っていないので
可愛いあの子に借りてみる

(そして黒鍵と白鍵の間を覗き込んでみる)

時に突っ伏した床板に
耳を押しあてて

でも音楽が聞こえてこない。

首から「音楽を探しています」と書いた
看板を下げて駅前に立ってみる。

(コインは幾枚か頂いけたけれど)

音楽が消えたこの世界で
僕はどうにも途方に暮れる



その時 遠くで聞こえ始める子どもたちのハミング



わずかな手がかりを掴んで
今。





テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

レター

失った言葉達を
チョークで道路に
叩きつけていると
無情にもスコールが
すべてを流し去っていって

(けれど
 心の何処かで
 それを心地好いと
 感じたのも確かで)

白濁した水溜まりの中
僕は幸福感に
抱きとめられていた


テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

パラソル、行き過ぎて後。


「そこまでだ」

と叫ばれたある日の午後
声の主を探して
足元の影を覗き込んだ
路上で
僕は途方に暮れていた
(せっかくの警告も
 伝わらなければ意味は無い)
すでに
空から降ってきた
2本の矢が
僕の両足をアスファルトへと縫い止めていたので
何を
何をだと
心の中でつぶやくも埒はあかない
けれども
心の何処かで自覚も確かにあるにはあるのか
人違いだと叫び返すことも出来ない
(じりじりと日は射して
 まるで僕の焦燥感)
パラソルをさした君が
軽やかに目前を通り抜けるのを
ただ
ただ
見つめながら
「君の声ではなかったよね?」

確認することも出来ずに

(どうかあの日あの眼差しで
 一瞥をくれたあの時の君に
 僕はもはや届けようのない謝罪を
 唱え続けている)

「そこまでだ」

と叫ばれたある日の午後
手遅れな言葉の山を抱いて
いまだ
両足は2本の矢に
縫い止められたまま


テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

ホイップクリームで包まれた何か

声が
囁きが
泡のように小さく寄せ集まって

届いてほしい

スプーンいっぱいにすくい取った
ホイップクリームをほおばる君に










テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

愚者と砂糖菓子

何処にも行き場がない
義憤だとか多分そんなものが

たかだかテレビをながめやるだけで
愚かしくも僕の中になだれ込んで
ネット上の容赦ないニュース画像にうちのめされて

それが世の中だと言う言葉で
ひとくくりにされて

山積みの裁判記録を延々と
読みあげるだけ
(判決を下すでも答弁をするでもなく)

客観性が足りない

それは、自分と他者の線引きが足りない
ということで

つまりは自我の確立を!

と 
いまだ声高に胸の内で叫ばなければない
幼稚な自分を

知識の壁でコーティングしても
空洞ならば
ウィスキーボンボンの方が
まだましで

何処にも行き場がない

いまだ



テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

スウィーツ・フェティシズム

投げかけられた言葉に
差しだした傘
滴となって転がり落ちる言葉は
甘やかなキャンディに変わればいい

ワードプロセッサに
打ち込まれていく言葉
幾重にもファイルを重ねて
出来上がるドレープは
ミルフィーユにも似た

(震える唇が紡ぐ言葉は、
 口の端についたバニラのように
 溶け出して)

よく冷えたサイダーが
爽快な言葉をはじかせて
そうしてすべてを
流し込んで

でも

僕は甘いものは不得手で
きっとそれが
喋り下手の原因。



テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

ちいさな口論の果てに。

瞳の奥を横切ったのは
ピアノをはじいた鍵盤の黒
不安を乗せた船はたゆたい
一体何処へ
行こうというのか

嵐のようにめぐりくる思考を
てなづけ手入れし
そっと
貴方にとどけたいのだが

(どうにもやりようがうまくない)

マックスコーヒーくらい
甘くなければ
言葉の報酬に意味がないのに

(昨日向けられた笑顔が
 今日も笑顔であるとは限らない)

友人のアドバイスという鉤先で
身体の何処かを引っ掛けられて
水中から引き上げられるような

(もののみごとに釣り上げてくれる)

その痛みで

いつも自分は誤解に気づく。

そうだ

本当はどうしたいのか、を
バケツですくって
総身に浴びせかけるのだ

明日も貴方と生きるために


テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学