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羽島 貝(hajima, kai)

Author:羽島 貝(hajima, kai)
1973年 東京生まれ
代表著書:羽島貝詩集『鉛の心臓』
日本詩人クラブ会員
日本現代詩歌文学館振興会会員
球体関節人形師

中年が詩を綴る日々。

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溺者






理由はそれだと云って
おまえは
岸辺に降り立った
一羽のカラスを指さした

かつて巷間の病巣の深さに怯え
テレビが直視できない僕を
おまえが、なおも顎先を摑まえて
画面へと押しつけたときのように。

とどまることの決してない流れから
這い上がろうと岸へかけた手を
おまえは
笑いながら踏みつけた。

そう 確かに慈悲の一撃が必要だったのは
この僕のはずだった。
おまえは
笑いながら己のこめかみに銃口を当てて
引き金を引いてしまった。

「もう貴様のことなど見てられない!」

噴出した鮮血が僕の手元を
ヌルヌルに湿らせたので
わずかに岸にかかっていた指が
外れてしまった。

はずみで
頭まで流れの中に身を浸した僕は
ああ 意外にも
その中で呼吸が可能であることに気がついた。

思わず両手で顔を覆うと
血生臭いお前の匂いが
馬鹿めと云った。

「すまない」

僕は押さえつけた指の間から
ようやく謝罪の言葉を漏らすと
貴様のすまないは安いから。
などと呟いて
穴あき髑髏になったおまえは転がっていった。

このヌルついた手では
もう決して岸辺を掴むことは 出来ないだろう。
舐めても
舐めても
おまえの血が僕の掌から 落ちることはないのだから

だが
おまえの死と僕の生とは無関係なものだ。
ましてや
一羽のカラスが僕の理由であるなどと云うことはない。










テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学