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羽島 貝(hajima, kai)

Author:羽島 貝(hajima, kai)
1973年 東京生まれ
代表著書:羽島貝詩集『鉛の心臓』
日本詩人クラブ会員
日本現代詩歌文学館振興会会員
球体関節人形師

中年が詩を綴る日々。

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The Lamps of Heaven
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紙片






窓をあけて
風に吹かれていた僕は
なんだか風になびく
紙になった気分で

(そのままひらいた窓から
 するりと外へ)

最初に外へ出たのは
僕の右足だったか
僕の左足だったか










テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

晴れた日







眼帯をした僕に会いに来た君も眼帯をしていた。
僕が右目で君が左目だったので
二人はまるでお互いの鏡のようだった。

どんな時でも
僕が君を思うほどには
君は僕のことを気にしてはいなかったようだ
どちらが正しい友愛であるのかはわからないが。

担いで煙から逃げている。
担いでいるのは僕
君は失神していた。
けれど窓から飛び降りた僕の下に
ぬるま湯をはったバスタブを置いたのは
あれは確かに君であった。

どんな時でも
君が僕に優しいほどには
僕は君に優しくは出来なかったようだ
優しさのあるべき形がどのようであるかは知らないが。

それでも僕らは友人であった。

君が最初に
「友達だろう?」
と臆面もなく言い切ったときから
僕はすっかりその言葉に依存して
君の友人であると安心している。










テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

素描 XIX









僕たちは
互いを助け合うことは
出来ないかもしれない

だが

互いを祝い合うことは
出来るだろう

それだけだ








テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

涸れた沼のような






どのみち、
もう決まってしまっていることなんだ。

それがそうなるということは
あらかた決まってしまっていて
しかもそれが漠然としているものだから
いつまでたっても決定していないような気分のまま
ずるずると、
それでいて絶対的な決定へと僕は向かっているんだ。

この状態は、
抜け出そうともがけばもがくほど
思索の澱が泥濘となって、
そこからの脱出を阻むのだ。

(彼はおそらく、他人の愚痴ばかりを聞きすぎたのだろう)











 

テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

伏した睫の先で






それでも夢を見ずにはいられない

「世界の本質は盲目的な生への意志である!」

それでも夢を見ずには生きられない

「彼は夢のように世界を信じている! 熱病よりも熱く!」

今は暗闇なので
夢でしかものが見えない

現から遠く

(痛ましさに閉じられた瞳は夢を見るために)

見るなら夢を。










テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

素描 XVIII









歓声は
ひとりひとりの
勝手気ままな
表現の集合体でしかないけれど
その瞬間の思いは
きっと
一つ。








テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

あの場所





天国があったっていいじゃないか!

(それは楽園とはほど遠いものかもしれないが)

ストリートキッズや路上生活者のように
家のない者達にも
天国は与えられる

もういい夢を見ることがかなわなくなった
薬物常習使用者が
一日中リンゴしか食べられないような
生活を送っていても
天国は与えられる

(天国へ行けないのならば天国よ降ってこい!)

天国へ行こう!
天国へ行こう!
天国へ行こう!
天国へ行こう!

(天国へ行けないのならば天国よ降ってこい!)

安アパートで凍えて眠る
ソファの中の娼婦よ娼夫よ
カーテンの隙間から天国がのぞいている

ブロードキャスト終了後の
つけっぱなしのテレビノイズが
人々の歓声に

(祝福)

聞こえはじめる――――――――。









テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

郷愁











とめどめなくあふれでる涙は悲しいせいではない、
と思う。
僕はまだ
郷愁という言葉を知らない。











テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

素描 XVII









青い空に白い雲
黒い空に銀の星








テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

祈り






路上の死体
まだ新しい
一見、ただその人が
眠っているかのような死体
雨上がりの午前
だが死体は濡れてはいない
覗き込む通行人
どうか憐れみたまえ










テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

29







背中を丸めてくつくつと
笑う幸せなのだ。
わかってもらえるだろうか。
くつくつと
くつくつと笑う喜びを
歯ブラシをくわえて鏡を覗き込む、
そんな幸福感を。










テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

落日






明日沈む陽の色を考えている。
いつも
必ず沈む陽の後の暗闇を夢見ている。
ただ
終日の安らぎを求めている。
たとえ陽が再び昇り来るものであっても
沈みゆく紅の瞬間を信じている。

夕暮れ時
長い影をひいて曲がり角を曲がった君を追っているのは僕だ。
視界が
オレンジのスペクトルに浸食されていく
その影よりも長い笑い声を残して
だが
君の姿は見えない
僕はまだ追っている。

明日沈む陽の色を考えている。
明日沈む陽の色もまた
今日と同じであるようにと
何かに祈っている
自らの内にある何かに。









テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

素描 XVI









会話と
対話の間で
君は悩んでいた。








テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

嫌いな音






時計の音は
いつまでたっても終わらない
何かが足をそろえて行進してくる音
耳の奥にへばりつく

もしくは何か

本当に聞き慣れたあの音に酷く似ている。











テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

歌が聞こえる






彼女の建てた高い塔に見えるそれは
井戸であった。

大丈夫という言葉を
コップに満たしては飲み干し
溺死してしまったのは確かにその井戸の底で。

その愚行をただ抱擁し、天使は眠りについた。
レクイエムを唇に









テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

素描 XV









今、そこに転がっているものを
一つ
あなたにひろってもらいたい。








テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

明るい場所






そこはあかるく
そこだけがあかるく

(あたりは白い壁だけで)

明るい場所










テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

グラフ






グラフにしたところで見えてはこない
この
憤りだとか喜びだとか云うものは

なにをたよりに
確たる感情の存在を、この高ぶりを
記録すれば良いのか。

身体中に刻み込むタトゥーのように?

胸を刺す感情のニードルは確かにひりつくような熱を。

グラフも燃え上がるような










テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

事実、あるいは事故






決定的な事実という奴は
たいてい
しのびあしでやってきて

それと気づかぬうちに
背後から襲いかかって
くるものらしい。

振り返ったときには
すでに、
事実は立ち去った後なのだ。

(もう遅いのだ 叫んでも届かないのだから)










テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

素描 XIV








ミステリーノベルを
紅茶にひたしたような女が
黒猫を抱いている








テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

生者で在る為に






鰭の千切れた魚であるなら
沈んでいくだろう
白濁した水の中を何処までも

汗みどろについて
考えるまでもなく
ただ疲弊していた

たどり着けないのかもしれないなどとは考えない。
まだ着かないだけなのだと

「諦めろ! それは既にお前の手をはなれた!」

くちぶえをふいて










テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

葬儀





ありがとうという言葉を
連綿と
真珠の首飾りのように
幾重にも首に巻いていた彼女が
頸椎部骨折で死亡した。
白百合を君に。












テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

素描 XIII









立ちつくすアスファルトの上
照りつける陽に一瞬の寒気を感じた日








テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

頭上ニ在ルモノ




どうしようもなく降りそそぐ慟哭を
笑顔で受け入れ、
焼けた鐵を腹の底に抱え込むような真似を
何故、とは問うな。

バスタブでもベッドでもソファでも良い、
ぐったりと憔悴しきった身體を
横たえるいとまもなく、ただ前へと。

踏み出す日々は平穏な泥濘だ。

首までつかったぬかるみの中で、泥を握りしめる
凝固。

その脆弱な礫を叩きつける壁はどこにもないがゆえの焦燥感を
何故、とは問うな。

できたてのチェリーパイで頬をひっぱたかれるような、
甘くて熱い屈辱はべったりと皮膚にへばりついて。

のぞむは、頭上。

それを、何故、とは問うな。












テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

穴の愛







僕が嫌いなあの人の顔には
黒い二つの穴がある。

いつもその穴はこっちを見ていて
睨み返すと吸われてしまう。

(いったい僕の何を奪おうというのか?)

その目玉の眼窩にて
露出した僕の皮膚に吸いつき
貪るように眺めるのだ。
それは実に卑しい感触で、
皮膚を啜るせせり音が
耳の奥にこべりついて
はなれない。

(蛭のように吸いつく顔)

やがて皮膚は融解し
穴へズルリと吸われていくのだ。

(あの人のうっとりした口元までもが
 卑しいものに感じてしまう)

僕はあの人が嫌いなんだ

(このままじゃ僕は視殺死体に)

だから
その愛は捨ててくれ。










テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

素描 XII









ビルの隙間に見えるのは空ではない
あれは穴








テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

ミキサー





完全に自己でありたいという欲求は
鏡を打ち砕きたいという衝動に似ている

いや、似ていない。

しかしこの焦燥感は、何もかもを粉々にしたいという、
破壊衝動に似ている。

いや、似ていたい。

身體中の骨も肉も血管も神経も脳髄も内臓も、
全てをミキサーにかけてドロドロにして
体積を減らし、凝縮させたいという、
これはもう興奮状態でしかありえない
否生理的欲求に似ている。

いや、似て以来。

自己はもう、耐えようのないせつなさに、
身を捩り続けていなければならない。











テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

アドレス






僕の住所を教えてくれと
昨日づけで
女友達からメールが届いていたので
僕は急いだ方が良いかと
彼女の携帯にかけてみたのだが
僕の郵便番号の頭3桁が
番地の頭3桁と重複していたため
携帯越しに
僕の口答を記述していた彼女は、
案の定ふたつを混同してしまった。
だから
僕は躍起になってその件の訂正
(ふたつの番号以下が入れ替わっていることについて)
を入れたのに
彼女は一向、
僕の伝えたいことをわかってくれない。

そのうちに苛立ちはじめた彼女の声は、
不意に男の声になって
僕に

「絶交だ」

と言ってきたのだけれど、その声がその声だっただけに
僕は
それが本当に彼女の気持ちなのかどうか
判断がつきかねてしまった。
ところで

僕の住所はもういいの?










テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

素描 XI









油染みた虹色の水たまりに映る黒い街








テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

ビキニとブーツ






なんてことだ世界が回っている

ベッドに喰われる前に
ベッドから逃げだそう!

(遠くで走るバイクの音)

午前三時の僕の部屋は
突拍子もなく狂っている

(隣人の寝息がする安普請)

眠りたいのに
眠れないんだ

(下半身が溶け出しちまって)

鈍い痺れが太腿をかけあがって
頭はますます冴えてくるんだ。

(キセルの切符がポケットの中に
 裏の磁気面には頭痛薬の
 広告の文字が印刷されている)

薬にラリった蜘蛛の糸が
非幾何学的な巣を作りはじめる

朝がこないんだ!
夜明けが必要なのに!
天井の蛍光灯はチカチカとしか瞬いてくれない!

(モット光ヲ!)

床の上に築かれた本のビルディング

(モット光ヲ!)

ここの五日で5㎏も痩せたよ
だって僕にはお金がない
たくさん本を買ったからね
だから何処かできっと誰かが
合計5㎏は必ず太ってる

ああ 5㎏分の僕の肉體!














テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

素描 X









そうなってしまったらばもう
笑うしかないではないか
笑うことすら出来なくなってしまったのならば
それは厭世ではない
あるのは虚ろである。








テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学