静かに
満ちるのを待っている

(時には戦略的に攻めなければならないことも
 あるやもしれないが)

夜に積もる雪のはかない音が聞こえるくらいに

(かつて掛けてもらった
 毛布の温もりを思い出しながら)

じっと
その時を待っている

数々の失った物や人や立場が
少しずつ
少しずつ
あるものはもう戻らず
あるものは帰ってきてくれた

(そうしてそれが多分
 元からの自分の許容量)

静かに
満ちるのを待っている

その朝も

プラットホームに立ちながら
そう
あともう少し

テーマ: 自作詩
ジャンル: 小説・文学




音楽が聞こえてこない

ソファの裏から
テーブルの下
冷蔵庫の中
昨日買ったばかりの
リンゴを割ってみても
けれど音楽が聞こえてこない

(飛ぶ鳥を見なくなった空で
舞う蝶を見なくなった野辺で)

走ってはとまるを繰り返す
まだ音楽は聞こえてこない

(路面を水滴が
 穿ち始める
 雨だ!)

僕はピアノを持っていないので
可愛いあの子に借りてみる

(そして黒鍵と白鍵の間を覗き込んでみる)

時に突っ伏した床板に
耳を押しあてて

でも音楽が聞こえてこない。

首から「音楽を探しています」と書いた
看板を下げて駅前に立ってみる。

(コインは幾枚か頂いけたけれど)

音楽が消えたこの世界で
僕はどうにも途方に暮れる



その時 遠くで聞こえ始める子どもたちのハミング



わずかな手がかりを掴んで
今。





テーマ: 自作詩
ジャンル: 小説・文学

レター

Category : 現代詩

失った言葉達を
チョークで道路に
叩きつけていると
無情にもスコールが
すべてを流し去っていって

(けれど
 心の何処かで
 それを心地好いと
 感じたのも確かで)

白濁した水溜まりの中
僕は幸福感に
抱きとめられていた


テーマ: 自作詩
ジャンル: 小説・文学


「そこまでだ」

と叫ばれたある日の午後
声の主を探して
足元の影を覗き込んだ
路上で
僕は途方に暮れていた
(せっかくの警告も
 伝わらなければ意味は無い)
すでに
空から降ってきた
2本の矢が
僕の両足をアスファルトへと縫い止めていたので
何を
何をだと
心の中でつぶやくも埒はあかない
けれども
心の何処かで自覚も確かにあるにはあるのか
人違いだと叫び返すことも出来ない
(じりじりと日は射して
 まるで僕の焦燥感)
パラソルをさした君が
軽やかに目前を通り抜けるのを
ただ
ただ
見つめながら
「君の声ではなかったよね?」

確認することも出来ずに

(どうかあの日あの眼差しで
 一瞥をくれたあの時の君に
 僕はもはや届けようのない謝罪を
 唱え続けている)

「そこまでだ」

と叫ばれたある日の午後
手遅れな言葉の山を抱いて
いまだ
両足は2本の矢に
縫い止められたまま


テーマ: 自作詩
ジャンル: 小説・文学

声が
囁きが
泡のように小さく寄せ集まって

届いてほしい

スプーンいっぱいにすくい取った
ホイップクリームをほおばる君に










テーマ: 自作詩
ジャンル: 小説・文学

何処にも行き場がない
義憤だとか多分そんなものが

たかだかテレビをながめやるだけで
愚かしくも僕の中になだれ込んで
ネット上の容赦ないニュース画像にうちのめされて

それが世の中だと言う言葉で
ひとくくりにされて

山積みの裁判記録を延々と
読みあげるだけ
(判決を下すでも答弁をするでもなく)

客観性が足りない

それは、自分と他者の線引きが足りない
ということで

つまりは自我の確立を!

と 
いまだ声高に胸の内で叫ばなければない
幼稚な自分を

知識の壁でコーティングしても
空洞ならば
ウィスキーボンボンの方が
まだましで

何処にも行き場がない

いまだ



テーマ: 自作詩
ジャンル: 小説・文学

投げかけられた言葉に
差しだした傘
滴となって転がり落ちる言葉は
甘やかなキャンディに変わればいい

ワードプロセッサに
打ち込まれていく言葉
幾重にもファイルを重ねて
出来上がるドレープは
ミルフィーユにも似た

(震える唇が紡ぐ言葉は、
 口の端についたバニラのように
 溶け出して)

よく冷えたサイダーが
爽快な言葉をはじかせて
そうしてすべてを
流し込んで

でも

僕は甘いものは不得手で
きっとそれが
喋り下手の原因。



テーマ: 自作詩
ジャンル: 小説・文学

瞳の奥を横切ったのは
ピアノをはじいた鍵盤の黒
不安を乗せた船はたゆたい
一体何処へ
行こうというのか

嵐のようにめぐりくる思考を
てなづけ手入れし
そっと
貴方にとどけたいのだが

(どうにもやりようがうまくない)

マックスコーヒーくらい
甘くなければ
言葉の報酬に意味がないのに

(昨日向けられた笑顔が
 今日も笑顔であるとは限らない)

友人のアドバイスという鉤先で
身体の何処かを引っ掛けられて
水中から引き上げられるような

(もののみごとに釣り上げてくれる)

その痛みで

いつも自分は誤解に気づく。

そうだ

本当はどうしたいのか、を
バケツですくって
総身に浴びせかけるのだ

明日も貴方と生きるために


テーマ: 自作詩
ジャンル: 小説・文学

郷愁Ⅱ

Category : 現代詩






とめどなくあふれでる涙は
悲しいせいではない。
海に帰る
海に返る
海に孵る
カエルと言う言葉の持つ響きは
悲しい響きではない。
帰る
とは出発点へ再び身を戻すことであり
返る
とは原点の状態にもう一度なることであり
孵る
とはその通り孵化することである
ウミニカエル
と記された場合のその意は
海へ帰るのか
海に返るのか
海で孵るのか
もしくは
産みに帰る
なのか

(ある種のカニはいったい
 海へ産みに帰るのをやめない
 海沿いの車道のアスファルトの上を、
 干涸び、砕け散った殼で
 埋めつくすのをやめない)

とめどなくあふれでる涙は悲しいせいではない、と思う。

自分はまだ
郷愁という言葉を知らない。






テーマ: 自作詩
ジャンル: 小説・文学

眠る海

Category : 現代詩




海底に沈みこむ
深く
鼓動はゆっくりと
静かに
はるか頭上にきらめく波間は
今は遠く
すべての
絶望した眼差しも
憤怒にかかげられた拳も
芥にまみれた明日も
今はどうか遠く
静かな海底に眠り込んで
今は
今だけは
海にたゆたい、いだかれて
今だけは
どうかと
波の音も遠く遠く
静かな
無音の
ああ
ただ海の底で

今はそう
今はそう

眠る海に





テーマ: 自作詩
ジャンル: 小説・文学




花片が降り積むよりも華やかに
紅葉が降り積むより鮮やかに
そして雪が降り積むより静かに

あなたの言葉が

この身体の中へと
降り積もってゆきました。

ある時は音もなく
ある時ははらはらと
ある時はしんしんと

日々降り積もる
あなたの言葉に

身体中が満たされて

今、自分は
生きているのです。



テーマ: 自作詩
ジャンル: 小説・文学


もしも失敗をしたならば
その痛みをソテーしよう
舌の上へと噛みしめるんだ
ギュッとばかりにその味を

(どこまでが正解の旨味で
 どのあたりが誤答のえぐみなのか)

混在する正と誤を
舌の上で吟味したなら
もう大丈夫

後はそう

痛みのソテーを
嚥下するだけ。

(明日の血肉と化すために)

テーマ: 自作詩
ジャンル: 小説・文学

Profile

羽島 貝(hajima, kai)

Author:羽島 貝(hajima, kai)
1973年 東京生まれ
代表著書:羽島貝詩集『鉛の心臓』
日本詩人クラブ会員
日本現代詩歌文学館振興会会員
球体関節人形師
Twitter→羽島貝@hajima_kai

中年が詩を綴る日々。

Category
Mail

name:
mail:
title:
note:

Calendar
09 | 2017/10 | 11
sun mon tue wed thu fri sat
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
Search
Monthly archive
"Blog-tomo"

The Lamps of Heaven
Do you become a "Blog-tomo"?

この人とブロともになる

Link
QR
QR