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羽島 貝(hajima, kai)

Author:羽島 貝(hajima, kai)
1973年 東京生まれ
代表著書:羽島貝詩集『鉛の心臓』
日本詩人クラブ会員
日本現代詩歌文学館振興会会員
球体関節人形師

中年が詩を綴る日々。

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郷愁Ⅱ






とめどなくあふれでる涙は
悲しいせいではない。
海に帰る
海に返る
海に孵る
カエルと言う言葉の持つ響きは
悲しい響きではない。
帰る
とは出発点へ再び身を戻すことであり
返る
とは原点の状態にもう一度なることであり
孵る
とはその通り孵化することである
ウミニカエル
と記された場合のその意は
海へ帰るのか
海に返るのか
海で孵るのか
もしくは
産みに帰る
なのか

(ある種のカニはいったい
 海へ産みに帰るのをやめない
 海沿いの車道のアスファルトの上を、
 干涸び、砕け散った殼で
 埋めつくすのをやめない)

とめどなくあふれでる涙は悲しいせいではない、と思う。

自分はまだ
郷愁という言葉を知らない。






テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

眠る海




海底に沈みこむ
深く
鼓動はゆっくりと
静かに
はるか頭上にきらめく波間は
今は遠く
すべての
絶望した眼差しも
憤怒にかかげられた拳も
芥にまみれた明日も
今はどうか遠く
静かな海底に眠り込んで
今は
今だけは
海にたゆたい、いだかれて
今だけは
どうかと
波の音も遠く遠く
静かな
無音の
ああ
ただ海の底で

今はそう
今はそう

眠る海に





テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

その現象を、名付けられない。




花片が降り積むよりも華やかに
紅葉が降り積むより鮮やかに
そして雪が降り積むより静かに

あなたの言葉が

この身体の中へと
降り積もってゆきました。

ある時は音もなく
ある時ははらはらと
ある時はしんしんと

日々降り積もる
あなたの言葉に

身体中が満たされて

今、自分は
生きているのです。



テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

痛みのソテー


もしも失敗をしたならば
その痛みをソテーしよう
舌の上へと噛みしめるんだ
ギュッとばかりにその味を

(どこまでが正解の旨味で
 どのあたりが誤答のえぐみなのか)

混在する正と誤を
舌の上で吟味したなら
もう大丈夫

後はそう

痛みのソテーを
嚥下するだけ。

(明日の血肉と化すために)

テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

愚者の行進


そこでつまづいたのならば
転がればいいじゃないか
派手にもんどうりうってみせて

もう一度
立ち上がればいいじゃないか

それから
さあ膝を払って
歩き出すんだ

(ちょっとぐらいの間なら
 振り返ってもいいだろう)

真っ直ぐに。
前だけを向いて

テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

荊の冠







あなたから荊を賜り戴くとき
こうべを垂れて
頭上にかざされた荊を持つ
あなたの指を突き刺した
荊の棘から滴る血を
眺めている






テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

スコールが遮断させた。

雷鳴と驟雨が
僕達の会話を遮断させた

一時はガラスのレモンをナイフで剥くような
そんな音階を声色に重ねかけていた

路上で

雨垂れが苦笑をともなって
降りそそいだ

(体温に温まった滴は
 頭から首筋を伝って
 鎖骨へと流れ込む)

僕達は

次の稲光を待たずに
目配せし合い
ドトールの軒下へ駆け込むんだ



テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

青空を傷口につめて



吐き出された君の言葉が
アスファルトに叩きつけられ
散弾となって
僕の胸を撃ち抜いた。

ぼっかりと空いた穴から
せめて
青空が覗けばいい



後悔しきった君の顔を見て
僕は許すしか道がなかった。



テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

桜散るこの風の中僕は


それでもと叫ばれた言葉が
君に
大量のビー玉を飲み込ませた

最早世界を愛することが
かなわなくなった君に
寄り添って立つ僕は
スケアクロウほどの役にも立たない

(君の髪を啄むカラス一羽追い払うことも出来ずに)

桜散る風の中

沈む陽を
ただ
目で追いかけている。




テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

歩く


ボロボロになった半身を
抱えあげて歩いてゆくしかない。

(他ならぬそれも自分)

そこらに放り出すことも出来ない。
ただ重い足取りは

(別にゴルゴダの丘を目指しているわけではない)

ひとえに
愛する人の元へ帰るために。





テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

一掴みの寂寥

言葉を

放り投げた後の
てのひらに残る
一掴みの寂寥

届いたろうか



空を仰ぐ

手のなかはもう
からっぽなので
君から届く言葉を待つばかり

(この時間は
 風邪をひいて
 熱が通りすぎるのを
 毛布をひっかぶって
 待っている時間に似ている)

このてのひらを
広げて
僕は待っている


テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学

ガラスの小壜

吹く風が
睫に触れた瞬間
即座に凍りつく雪原で
裂けたクレバスが
熱い血をたたえている。

僕は君がくれた言葉を
ガラスの小壜に詰めて
クレバスにそっと投げ入れた。

(はねたオレンジ色の滴が僕の右頬と右目を焼いた)

半顔の微笑みを
君に届ける
のは
それでも凍った睫でいるよりは
よほどいいのだから

君に説明する言葉を
僕はまるで持っていなかった

(頭上、碧空。
 摂氏マイナス測定不能)

血の流れに乗って、ガラスの小壜は鼓動に揺られながら流れていく
のは
僕の希望

どうか心臓に届けと





テーマ:自作詩
ジャンル:小説・文学